• 紛争/イスラエル・パレスチナ(2023〜)

ガザの人々を守り続ける命の拠点

「外科医になって33年経ちますが、今のラファほど凄惨な状況を見たことがありません」
パレスチナ・ガザ地区で戦傷外科医として医療活動を続けるマーティン・ノガード医師。言葉を選びながら静かに語りつつも、訴える内容は悲痛に満ちています。

野外病院に運び込まれる重症者

パレスチナのガザ南部・ラファに赤十字国際委員会(ICRC)と日本赤十字社を含む12の赤十字社がパレスチナ赤新月社(PRCS)と連携して開院した野外病院。
2024年5月9日より患者の受け入れを開始し、1日で200人から300人の外来診療、20人から100人の救急診療を行うなど、幅広い医療サービスを提供してきました。野外病院には、ガザ地区から来たパレスチナ人スタッフ200名と国際職員30名の合計230名が勤務。病床数は62床あり、入院患者の受け入れも行っています。

冒頭の言葉を述べたノガード医師は、6月に起きた爆発で野外病院に運び込まれた患者について次のように話します。
「一人はすでに亡くなっていて、到着直後に亡くなった人もいます。数人に緊急手術を行いましたが、3名の足を切断せざるを得ない状況でした。1人目は女性で両足を切断、2人目は男性で左足を、3人目は金属片があちこちに刺さり骨が飛び出していました」

デンマーク赤十字社 マーティン・ノガード医師

悲惨な状況の中、直面する課題は多岐にわたりますが、ベッドと医療物資の不足が大きな懸念点となりつつあります。
また、ラファには通常6つの病院がありますが、4つは既に閉鎖され、残り2つの病院が一部機能しているだけの状況となっているのです。

野外病院に生まれる新たな命

そんな過酷な状況下でも、新たな命は生まれています。5月10日にこの野外病院では初となる子どもが誕生。
「妊娠中はとても心配で怖かった。野外病院に来る前に違う病院に行ったのですが、医療スタッフが足りず、受け入れてもらえませんでした。ICRCの支援、出産を助けてくれた医師や看護師に感謝しています」と当時の様子を母親のムーサさんは振り返ります。
「私の妊娠期間は苦しみの連続でした。ハンユニスからラファへ、そして今度はラファからアル・マワシへと移動しなければなりませんでした。通常のように周産期の検査を受けたり、子どもの様子を見たりすることができず、不安でいっぱいでした。自分のことも娘のサナドのことも心配ですが、この子が私たちの支えになってくれることを願っています」

今もガザでは激しい戦闘が続いています。
多くの市民が1日も早く平和な日が来ることを望んでいます。

ムーサさん(左)

※赤十字は、イスラエル・ガザ人道危機で苦しんでいる人々の命と尊厳を守る活動を続けています。イスラエル・ガザ人道危機全体の活動実績は こちらをご覧下さい。

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