• 感染症/西アフリカ(2012~)

エボラ出血熱の感染拡大を防ぐ不断の決意

1976年にアフリカのスーダン南部(現南スーダン)で初めての感染が確認されて以来、2019年3月に至るまで30回以上のアウトブレイク(集団感染)が発生しているエボラ出血熱。近年では2014〜2016年にかけてギニアやシエラレオネ、リベリアなどの西アフリカを中心とした地域で多くの感染者が確認されました。

致命率の高いエボラ出血熱は、感染者の汗や排せつ物、血液などとの接触で感染し、感染者の死亡直前に最も感染力が高くなります。そのため、死体に触れることは感染リスクを高める危険な行為。
それまで、西アフリカには死者の埋葬の際に、家族が遺体を洗い、参列者も遺体に触れるという風習がありました。エボラウイルスに関する知識がないまま身内の葬儀を執り行う中で、その家族や知人が新たに感染する可能性が非常に高まってしまったのです。世界保健機関(WHO)の専門家によると、エボラによる新たな感染のうち少なくとも2割が、この従来の埋葬方法によるものと考えられています。

現地職員による命懸けの遺体処理

リベリアで命を懸けたこの危険な作業に従事するのは、「自分の住む地域のために」と名乗りを上げた、学生などの若い男性が中心。リベリア赤十字社で埋葬チームのリーダーを務めるフライデーさんもその一人です。
「誰かが村や道端から遺体を回収して、新たな感染を防がなくてはいけません。私たちは必ずその家族に説明し、家族の納得の上で回収、埋葬しています」
当初は大きな不安を抱えつつも、一人あたり120時間にも及ぶトレーニングを受けた上で、厳重な防護服を着用し、チームでお互いの安全を確認しながら作業にあたっています。
「私にも妻と6人の子どもがおり、命懸けでこの作業をしています。私も家族も、この仕事の意義を十分理解しており、安全のためのあらゆる手順に従って、自分と自分の社会を守りたいと思っています」

厳重な防護服を着用し、遺体処理をする埋葬チーム

確かな情報と知識が命を守る

一方、リベリアの隣国シエラレオネでは、明るい兆しも見えています。首都フリータウンから90km以上離れたジャングルの中にあるルフランシャ村では感染者が発生しなかったのです。これには赤十字の活動が大きく寄与したと村人は証言します。

「2012年にコレラが流行した時以来、赤十字のボランティアが浄水剤の配布や井戸、トイレの設置をしてくれました。エボラが流行した時も赤十字が正しい情報を伝えてくれ、その指示に従ったので私たちの村ではエボラは発生しませんでした」
車やバイクは通れない、徒歩でしか行くことができないような村へ、部族・言葉・文化が同じボランティアが通い、直接伝えられることで、村人に受け入れられ、エボラの拡大を防ぐことができたのです。

エボラ出血熱について啓発するシエラレオネ赤十字社のボランティア

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