• 災害/トルコ・シリア (2023)

度重なる人道危機の中で懸命に生きる人びと

シリア赤新月社ボランティア ロアアさん

「少しでも役に立っていると感じることで気持ちを保っている」
2023年2月6日。4時17分(現地時間)と13時24分(同)の2回にわたりトルコ南東部を震源とする地震が発生しました。両地震ともマグニチュード7.5を上回る巨大なもので、トルコとシリアに甚大な被害をもたらしました。
冒頭の言葉は、そんな大震災によって自身も被災しながらも、トルコ赤新月社の一員として発災直後から支援にあたったスタッフの言葉です。

支援者もまた被災者であること

トルコは世界で一番難民を多く受け入れている国で、国内には370万人の難民がいるといわれています。その中でも、2023年の地震で最も被害が大きかったのはシリアなど近隣諸国からの難民を特に多く受け入れていた地域。トルコ赤新月社が国際赤十字と共に長らく活動を続けていた場所でした。
そのため、同社のスタッフやボランティア自身、そしてその家族も被災しながら支援活動を続けるという過酷な状況が生まれてしまったのです。

トルコ赤新月社のキュブラ氏もそんな事態に見舞われた一人。両親と妹を一度に失いながらも気丈に支援活動を続ける彼女は、こう言葉を紡ぎます。
「人びとの傷を癒すことが自分の傷を癒すことにもつながると感じました」

日本赤十字社 高原さん(左端)
トルコ赤新月社 キュブラさん

危機の中でも希望を持つことを忘れない

地震はトルコの隣国シリアでも深刻な被害を及ぼしました。
シリアの社会インフラは10年以上続く内戦によりすでに脆弱な状態にあり、また経済危機や新型コロナウイルス感染症、コレラの流行など幾つもの人道危機が同時に発生しているところを地震が襲うという、他に類を見ない事態となりました。
さらに、現地の不安定な情勢や、燃料・電力・資機材などの不足を背景に、赤十字をはじめとする多くの国際的な人道支援団体は被災地へのアクセスさえ難しい状況に。
そんな困難の中でも活動しているのが現地のシリア赤新月社で、ボランティア3,500人が懸命に支援活動にあたりました。その内の一人ロアア氏は今も思い出すことがあると言います。
「地震の救援活動中に出会った、サリーという名前の小さな女の子のことが忘れられません。彼女は、地震によって家族全員を失ってしまいました。震災後の最もつらい状況の中、たった一人で立ち向かわなければいけなかったのです。サリーの置かれた環境を思うと、今困っている人、助けを必要とする周囲の人びとのためにボランティアとして自分のできる最大限のことをしようと奮い立たせてくれます」

シリア赤新月社ボランティア ロアアさん
シリア赤新月社ボランティア ロアアさん

また、日本赤十字社も姫路赤十字病院の髙原看護副部長を保健医療コーディネーターとしてシリアに派遣しました。
髙原看護副部長は、現地の様子について次のように語っています。
「崩れかかった建物があってもその被害の原因が紛争なのか震災なのかも分からず、度重なる苦労を想像し落ち込むような気持ちになることもありました。
でも、こちらが話しかけるとキラキラした目で学校の話を聞かせてくれる子どもがいたのです。その子が希望を感じさせてくれました」
未曽有の人道危機に直面するシリアで、人びとは今も懸命に生きています。

日本赤十字社 高原さん(左端)

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