• 紛争/シリア (2011〜)

シリアの人々のただひとつの願いごと

シリア難民 リンさん(16歳)

2011年に北アフリカや中東のアラブ諸国で発生した民主化運動、通称「アラブの春」。大規模な反政府デモなどを伴い多くの国で難民が発生しましたが、その中でも特に大きな影響を被ったのが内戦へと発展したシリアです。
リンさん16歳も故郷を追われた一人です。

ゴムボートでの決死の脱出

「自分にこんなことが起こるなんて思ってもいませんでした。自分の国から逃げなくちゃいけないなんて…。すごくつらかったけれど、生きるためにお母さんと妹の手を握って必死で逃げました。でも、海に出たらとても怖くて…。目の前でボートから落ちて死んでいく人も見ました」
粗末なゴムボートで多くの難民が海を渡る映像は、当時世界中に大きな衝撃を与えました。
「私たちが経験したことは、もう他の誰にも起こってほしくない」
自らが経験した過酷な境遇を憂いつつも他者への眼差しも忘れないリンさん。
そんなリンさん同様、困難な状況下でも他者のために尽くす人々がいます。

シリア難民 リンさん(16歳)
シリア難民 リンさん(16歳)

人間が困ったら助けるのは人間

多くの人道支援を必要とする人びとを支えているのがシリア赤新月社です。
シリア赤新月社は病院の運営や巡回診療といった医療活動の他にも「こころのケア」「食料や救援物資の配布」「衛生教育」など、さまざまな支援を継続的に行い極限状態にある人びとの命や生活、尊厳を守っています。しかし、そのような活動でさえ危険と隣り合わせなのです。
2011年の内戦勃発以来、最初の5年間で48名もの職員やボランティアが活動中に命を落とし、負傷した人の数はこれを遥かに上回ります。

シリア赤新月社の職員として内戦下での活動経験を持ち、また日本語を話せる能力を生かして日本の国際NGOでシリアをサポートしていたこともあるラガド・アドリーさんは、支援を続ける理由を次のように話しています。
「私たちは全員人間なので、人間が人間のために何かをやらないといけない。人間が困ったら、誰かが助ける必要がある」
そして、世界に向けても発信を続けています。
「戦争中のシリアではなく、戦争前の本当のシリアをまずは知ってほしい。そして、私たち(シリア人)もこの世界にいるということを忘れないでほしい。私たちのことを忘れないでください」

ラガド・アドリーさん
ラガド・アドリーさん

願うことはただひとつ

日本という異国の地からも母国シリアを支援し続けたラガドさん。願うことはひとつです。
「いつの日かシリアに戻って教育機関で活動をしたいんです。シリアに戻ってシリアに貢献したいんです」
家族とともにシリアを離れたリンさんも願うことは一緒。
「勉強がしたいんです。たくさん勉強して、大きくなったら家族みんなでシリアに帰りたい。ただ、それだけです」

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